リラクゼーションサロンに転職して3年。
人を癒す仕事がしたくて、喜ぶ笑顔が見たくて飛び込んだ業界。
いつかは自分のお店を持ちたいな…なんて、そんなことを思ってしまうくらい、今の仕事が好き。
以前のオフィスワークでは触れることができなかった発見と感動が尽きることはなく、やりがいを感じている。
【変わってゆく日常】
いつも通り出勤すると、見慣れない女性と店長が打ち合わせをしている。誰だろう?
「カナちゃん、おはよう」
同僚のユウちゃんだ。
「あ、ユウちゃん!おはよう」
「ユウちゃん。店長と話してるの、誰?」
「本部のマネージャーさんだって。しばらくうちのお店に勤務して、いろいろとチェックするみたいだよ。」
(そうなんだ。うちは接客もしっかりしてるし、特に問題はないと思うけど……)
【”笑顔のために”はいけないことなの?】
マネージャーが来るようになってから、職場の雰囲気はピリピリしている。
従業員同士が名前で呼び合うことは禁止。
出勤したら雑談は禁止。
『同僚はお友達ではない』とのことだ。
長々と会話している時間は無駄。
売り上げアップのため無駄は省くこと。
はやく次のお客様をご案内するように、との方針で、お客様との会話も制限されるようになった。
お客様との会話を通して心に寄り添うこともリラクゼーションの仕事の一環じゃないのかな…?
会話は「無駄」なの?
疑問の種が心の中でどんどんと育っていった。
でも、わたしはその気持ちに蓋をして、
「上司の指示なんだから仕方がない」
「本社の方針なんだから仕方がない」
そう自分に言いきかせ、淡々と仕事をこなすようになっていった。
コミュニケーションの取れなくなったサロンは、みんなロボットのようで、心のこもっていないマニュアル通りの言葉ばかりが飛び交う。
まるで機械の部品のひとつになってしまったかのように、私の心は仕事に対するやりがいを感じることができなくなっていた……。
そんなある日、マネージャーから呼び出された私に、信じられない言葉が浴びせられる。
「樋渡さんに聞いたんだけど…あなた、私の方針が気に入らないようね。」
———え!?ユウちゃんがどうしてそんなことを!?
「そんなこと……言ってません!最近はあいさつ程度で会話もしていないんですよ?」
その後の会話はよく覚えていない。
混乱した頭で理解したことは、ユウちゃんの言葉が原因でマネージャーが私のことを快く思っていないこと。
全くわけがわからない。どうして?
ユウちゃんに確認しようにも、会話するチャンスがない。
【きっかけは1件のメッセージ】
その日の帰り道、1件のメッセージが届いていた。
———あれ、ノリだ。どうしたんだろう?
ノリは高校のクラスメート。
家がサロンの近所ということもあり、お客様として定期的に通ってくれていて、今日も夕方の予約で来てくれたばかり。マネージャーと話した後だったから、勘のいい彼女は私の異変に気付いたのかもしれない……
「カナ、大丈夫?元気なかったからさ。何かあるなら話きくよ。」
ノリからのメッセージを見て、優しさに涙が出てきた。
私が返事をすると、すぐに折返しの返事をくれて近所のファミレスで会うことになった。
私は、マネージャーが来てから変わってしまった、サロンへの不満。そして今日告げられた身に覚えのない話まで、一気にノリに吐き出した。
「うわ~災難だったね。でもさ、それって転機かもしれないよ。」
「え……転機?」
「実は、私もまえに似たようなことがあって。今思うとあれって転機だったんだ。だからカナもそうじゃないかなって思ったの。」
そういうとノリはあるサイトのURLを私に送ってきた。
「私もね、職場でトラブルに巻き込まれたことがあって。その時にこのサイトに救われたんだ。大げさかもしれないけど、今も私が諦めないで同じ業界で仕事を続けていられるのは、これのおかげ。」
そのサイトは、占いのサイトだった。
「私が占いなんて、意外でしょ?でも自分ではどうしようもない出来事だったから、当時は藁にもすがる思いだったんだよね。」
たしかにノリが占いなんて意外。でも、当時のノリの状況と今の私が重なる。
【※的中し過ぎ・閲覧注意※あなたに次起こること「人生二大転機」】
例えば仕事を変えなきゃいけなかったり、友人関係を見直さなきゃ
いけなかったり...。あなたはこれから、一からなにかを構築する」
という苦しみを味わうことになるわ。
『一からなにかを構築する』という文章を読んで、いつか叶ったらいいな……と思っていた夢が頭をよぎった。
本当に、これが私の転機なんだとしたら……私は、“今”行動を起こすべきなのかもしれない……。
大急ぎで家に帰った私は、着替えもせずにサイトの言葉を追いかける。
苦難を乗り越えたあなたにはご褒美が待っているわ。あなたは
ワンランク上の自分になって、第二の人生が歩めるはず。
私の胸は高鳴っていた。”未来”の可能性を感じて――。
【それから】
占いをして半年後、私は独立して個人のサロンをオープンした。
サロンといっても、自宅やレンタルルームを使ったプライベートサロン。
ありがたいことにクチコミでお客様が増え続けている。『お客様の笑顔のため』という私の理想は間違っていなかったんだと、自信になった。
最近では一人で接客することが難しくなってきたので、ユウちゃんにお手伝いをお願いしようと思っている。
———実はあの時、ユウちゃんは私たちがお客様との会話を大切にしている事をマネージャーに伝えたらしい。売り上げ第一のマネージャーにしてみれば「方針が気に入らない」と解釈しても仕方がない。でも、私とユウちゃんが目指している方向は一緒だった。やっぱり仲間だった。
マネージャーの仕事の仕方は、正直いまでも好きになれない。でも、私が動き出すきっかけになったことは確かで、その機会を作ってくれたと思うととても感謝している。
あなたも、自分の「運命の転機」を逃さないで。
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