いつもの満員電車の中、会社に向かってる。毎日同じことの繰り返しだと思っていたけれど、最近の私は何もかもがツイていない。
恋愛では5年も付き合った彼氏に振られ、仕事では些細なミスが続き、「あー、自分ってなんでこんなうまくいかないんだろう」と自分で自分にがっかりしてしまう。
正直、仕事に行くのは億劫…、でも働かないと私の人生はもっと途方にくれてしまう気がして、なんとか毎日がんばって会社に来た…そんな日々だった。
彼から言われた突然の一言
彼は学生時代からの友人だった。就職のことで色々不安に感じたことを相談している間に距離が近づいて、お互いに「これからがんばっていこうね」と励まし合いながら、うまく支え合ってきたつもりだ。それから5年。「そろそろ結婚かな」と思っていた27歳にして「ごめん、サキとは結婚が考えられない」と言われ振られてしまった。
本当に突然だった。
半同棲状態でいつも一緒にいたのに、いつも一緒にいたいと思う私の気持ちがずっと重たかったというのだ。
仕事もうまくまわらない
こんなにあっさり別れを告げられるなんて…。ショックで仕事への集中力を失ってしまい、些細なミスが続いてしまった。ふと気が緩むと彼のことばかり考えてしまう。
仕事だって好きだったのに、今は職場に向かうのも何だか気が乗らなくなってしまった。周りの同僚はキラキラ輝いているように見えてしまうのだ。
「このままではまずいなぁ」という気はしていた。「頑張らないといけないのにな…」と思いながらも、「どうして私だけ?」なんて思っていた。
私たち、このまま終わりなの?
やっぱり、あんな些細なことで別れるなんて、納得できない。もう一度だけ話したい。そう思って彼氏に連絡をした。
耳元でなるコール音。しばらくして電話に出る音がした。
5年も付き合った人だから「話しを聞いてくれるんじゃないか」「私の今の状況を心配してくれるんじゃないか」そんな淡い期待があったのは間違いじゃない。
でも。
「ごめん、ちょっといろいろ忙しいんだ。連絡はもう控えて欲しい」
心のどこかで、まだ別れたことも夢なんじゃないかと思っていたけれど、「これは現実なんだ」と突き付けられた。彼に電話をしたのが自分の部屋でよかった。誰にも何にも気にせずに私は泣いた。
見かねた同僚
私は仕事に打ち込むことにした。他に何も考えたくなかった。それでも仕事の成果がでなくて、好きだった仕事への自信も失ってしまいそうだった。
この仕事に向いてないのかな。このままがんばっても今の会社で活躍できるイメージがわかない。もしかして転職して、もっと、自分に向いていることをがんばった方がいいのかもしれない…。
残業が続いている私を見かねて声をかけてくれたのは同じ年の同僚だった。同じ時に入社して最初は仲良かったけど、どんどん評価されていく彼女をみて、少し気が引けてしまってから少し疎遠になっていた。
「最近、残業続いてるけど大丈夫?今日くらいちゃんとしたもの食べに行かない?」
同僚は私と同じ年なのに、仕事でも評価されていて春にはプロジェクトのリーダーに抜擢されていた。同じ年なのに私とは違う遠い存在のように感じてたけれど、気にかけてもらったのに断るのも…と思い、一緒に夕飯に出かけることにした。
他愛もない話をしているうちに同僚が昔と変わらない様子にすこしほっとして、「なんか最近いろいろ上手くいかないんだよね」と自然に口に出していた。
「そういうときってあるよね。私も実は今からちょうど1年位前、仕事もプライベートもうまくいかなくてすごく落ち込んでたときあったよ」
え…全て順調に進んでいるように見えたのに、そんなときがあったなんて…。
「私は自信があるように見られるけれど全然そんなことなくて…。迷ったときは自分と違った視点でアドバイスもらえるとやるべきことが見えるときがあって」
と1つのサイトを見せてくれた。
「占いなんて、とは思うかもしれないけど、色んな迷いが晴れたきっかけはこれだったんだよね」
人生を苦しいと思うのは、なぜ?
自宅に帰り、教えてもらったサイトを眺めてた。これだけで何もかもうまくいくとは思えないけど、これからどうなるのか占ってみようかな。
「占った瞬間人生180度変わる。次あなたに起きる出来事~次待つ使命」
180度変わる?まさかね。でもちょっと気になって占ってみた。
カードが指し示しているのは、今のあなたが取り組んだこともないような、人生の難関と真正面から取り組まなくてはならない時期にあります。あなたの辛さの原因は、自分の力量が足りてない仕事をがむしゃらにやってしまったり、信用していた人と突然連絡が取れなくなったり…そんなことが起きていませんか?がんばってもまた打ち負かされる。もう疲れた、と投げ出したくなるのも道理です。
そうだ…。
本当だったら彼にもう一度連絡しなくてもよかったのに連絡したり、うまくいかない仕事をがんばったりしてたかも…。
「でも時には気長さも大切。大丈夫。あなたがやっていることは間違っていませんよ。そして、次にあなたに訪れる転機。それは今の状況に合わせて自分にやれることをやり抜く…その先に思いもよらない“運命のいたずら”が待ち受けていることでしょう」
この言葉を聞いてほっとした。
そうだ。まずは自分にできることから、していければいいよね。
全てを信じられてわけではないけれど、気持ちが軽くなるのを感じて、その日はゆったりとした気分で眠りに入った。
それから…
占いをして1ヵ月、相変わらず全てがうまくいったわけではないけれど、自分にできることからと思ったら少し肩の力が抜けて、仕事でも少しずつ手ごたえを感じ始めたころだった。着信のあったメッセージを確認したら、彼だった。
「会えないかな?」
どんな話だろう…。でも素直にまず会いたい、と思った。
仕事が終わって、待ち合わせたカフェで久しぶりに彼に会った。
「サキ、少し痩せた?少し疲れて見えるけど、大丈夫?」
残業が続いていて疲れが取れていないのを見透かされた気がして、ドキっとする。
「最近少し忙しくて。それより何か話があったんじゃないの?」
そう聞くと、彼がまっすぐ自分をみて話し始めた。
「自分のわがままだって分かってるけど、俺たち、もう一度やり直せないかな」
素直にうれしい、と思う反面、また重たく感じられるんじゃないかと不安がよぎった。
「でも、また一緒にいたら、私のこと重たくなったりしないの?また連絡控えて欲しいって言われるんじゃないかって、不安で…」
「そんな風に不安にさせて本当にごめん。俺、あのときはどんなに自分がサキに支えられてたか、分かってなかった。あのとき仕事でも思ったような成果が出せなくて焦ってたんだ。でも、別れてからサキのいなくなった部屋に1人で過ごしてみて、毎日が色あせたように感じて…サキの大切さに改めて気付いたんだ」
彼の真剣な表情を見て、心からそう言ってるんだ、ということが伝わってくる。
「これから先、一緒に過ごしていくのは、やっぱりサキがいいって今ならはっきりわかる、だから、もう一度やり直したい。」
嬉しい気持ちが溢れてきて、うまく言葉を出すことができなかった。私は「うん…うん…」と何度も頷いていた。
目を腫らして次の日に出社すると、課長に呼び出された。
「ひたむきなきみに朗報だよ。次のポストが人事異動であくんだ。いつでも真面目に取り組んでいる姿はみんな見ているから、上層部全員がきみをそのポストにってさ。最近はミスもあったけれど、最近の君のがんばりは目を見張るものがあったからね」
また私は泣かされた。うれしくて、みんなの愛情を感じて、未来が少しだけ開いていくのを感じた。
あなたも、自分の人生を信じて。
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