私はスマホを見ながらため息をついた。
彼氏の佑樹からの返信を見たからだ。
「金曜ごはん行く約束だったよね?どうする?」
「俺はなんでも大丈夫。真樹の食べたいものでいいよ。」
友達の紹介で知り合った佑樹と、付き合ってもうすぐ3ヶ月が経つ。
最初に出会ったときには、ドキドキして、告白された時は本当に嬉しかったのに。
最近はデートに行くのも、気がのらなくなってしまったのだ。
食事に行くお店だって、本当は佑樹に決めてほしい。いつも私に任せてばっかりだ。そういう小さなことも、最近は気になるようになってきた。
…そういえば、前の彼氏も半年もしないで別れちゃったんだっけ。
前の彼氏は誰にでも人懐っこい性格の年下の美容師だった。いい人だったけど、どこかピンとこなくて別れちゃったんだよな。だから、次付き合う人は全然違うタイプにしようと思ったんだっけ。
佑樹はメーカー勤務の真面目なサラリーマン。
今の彼氏は絶対大丈夫だと思っていたけど、またか…。
なんでいつもこうなってしまうのかは、いまいちよく分からないままだ。
なんて返信しようか迷っていると、親友から電話がきた。
私ってわがまま?
親友からの電話は結婚の報告だった。
「おめでとう!遂にだね。」
「ついに結婚することになったよ~!長かった~絶対来てよね!」
二人は学生時代からの付き合いで、もう7年の付き合いになる。
彼の転勤が決まり、いい機会だということで籍を入れたらしい。
私は相手のこともよく知っていて、何度か3人で食事をしたこともある。
親友とその彼は、恋人というより友達同士のようで、私と佑樹や、今までの歴代の彼氏とは、全然関係が違うのだ。
「真樹は最近どうなの?彼氏できたって言ってなかったっけ?」
「うん、できたけど…なんか違うんだよね~」
「それ前の彼氏と別れた時も言ってたじゃん!もうちょっと我慢してみなよ。完璧な人なんてこの世にいないわけだしさ~。」
「そうかなあ。」
「そうだよー!」
…そういえば私って、誰かと何年も付き合ったことって無いかもしれない。「なんか違う」そう思って別れることが多かったけど、もしかして私が子供すぎるのかな。もっと大人になって、1人の男性ときちんと仲を築いていく。そういう事をしないといけない年齢になってきたのかもしれない。
幸せそうな親友の声を聞いて、私は焦った。
やっぱり、今の彼氏と関係を続けてみよう。そう思って、彼に返信をした。
親友の結婚式で…
親友の結婚式は、本当に仲がいい人だけを呼んで行うアットホームな結婚式だった。
花嫁姿の親友を見てると、早く結婚したいな、と思う半面、そのとき佑樹が隣にいるのを想像するとなんか違和感を感じてしまう自分もいる。
複雑な気持ちのまま会場の隅にいると、いきなり話しかけられた。
「大丈夫ですか?」
「…えっ」
「ちょっと元気がないように見えたので。いきなりすみません。」
話しかけてきたのは、私より5歳くらい年上の男性だった。
「大丈夫です。ちょっと、寂しくなっちゃって…」
「ああ、友達が結婚すると寂しくなっちゃいますよね。」
彼は新郎の友達で、弁護士だという。名前は裕二さん。
裕二さんは話し方も落ち着いていて、大人の男性、という雰囲気だった。
裕二さんは話を聞いて相槌をうってばかりの佑樹とは全く違ったタイプで、向こうから話題を振ってくれたり、振ってくれる話題の種類も豊富で、すごく話しやすかった。
話しているだけでいつもと違う新鮮な気持ちになれた。
やっぱり、大人の男性っていいな…。
今の彼氏でいいのかな。
裕二さんとは連絡先を交換して、式場の最寄りの駅まで一緒に帰った。
結婚式の帰り道、裕二さんから連絡がきた。
「今日はありがとう。」
「こちらこそ話せて嬉しかったです!」
「真樹さん、綺麗で緊張しました(笑)また機会があれば。」
佑樹は外見を褒めてくれることなんてないし…やっぱり今の彼よりいいなって思っちゃうな。
でも、また付き合ったらピンとこないパターンかもしれないし。
やっぱり、私は結婚したいから…このまま佑樹と付き合ってたら、多分結婚は出来る。佑樹と別れてもそもそも裕二さんと付き合える保証もない。
悩みながら花嫁さんのブログ巡りをしていると、ある占いにたどり着いた。
最終的に結ばれる人は誰?
あなたを好きになる3人の異性~最終的に結ばれるのはこの人!
過去に私を好きだった人、現在私を好きな人、そして将来私を好きになってくれる人の3人のなかから、私と最後に結ばれる人をタロット占いで教えてくれるらしい。
占いって、前に女子同士で出かけた時に行った手相占いくらいしかしたことない。
…本当に当たるのかな?ちょっと疑ってしまったけど、どんな結果が出てくるのか興味本位で、占ってみた。
あなたのことを過去に好きになった人は、自分を磨いたり、人を綺麗にするのが好きな人で美を追求する仕事に就いている人ですね。その人はあなたのことをふと思い出しては、元気にしているかな。と思っています。
美を追求する仕事…すぐに美容師だった前の彼氏が思い浮かんだ。
興味本位で占ったはずだったのに、夢中になってしまう。読みすすめていくと、「今あなたを好きな人」には佑樹がピッタリ当てはまった。
あれ…この占い、当たるのかも…。じゃあ、これから私を好きになってくれる人は…?
これからあなたを好きになる人は、精神的に大人な異性でしょう。いつもあなたをリードしてくれて頼りになる人。また、とても優しい人ですが、さりげない優しさで嫌味はありません。また、食に詳しく、グルメな一面もあります。
うーん。グルメな人って周りにいないなあ。
でも…これから私を好きになるって書いてあるし、これから出会うのかな。
あなたの運命の人は、「法律関係の人」ですよ。ですから、3人のうちで法曹関係に進んだ人がいたら、あなたの最終的なパートナーになるでしょう。あなたと彼は、いつまでも付き合いたての恋人同士のような関係になれるはず。
彼と結ばれるためには、自分から行動を起こしてみて。少しだけ勇気を持てば、あなたは幸せになれるはず。
法曹関係…思い浮かんだのは、弁護士の裕二さんの顔だった。
思わず、連絡してしまった。
『今後、空いている時にご飯にでもいきませんか?』
すぐに既読が付いて返信がきた。
『今、僕もちょうど連絡しようと思ってたんです。行きたいお店があるので、是非。』
ちょうど連絡しようと思ってたと言われて、占いをしたあとだったのもありドキっとする。
もしかしたら裕二さんが私の運命の人…?
そう思うとその日はなかなか寝付けなかった。
彼とのデート
デート当日、裕二さんはおすすめだというイタリアンに連れて行ってくれた。
裕二さんと話していると楽しいし、ドキドキする。
裕二さんは、細い見た目とは裏腹に食べるのが好きで、いろんなお店を教えてくれた。
話せば話すほど、あの占いにかいてあった、これから私を好きになる人と一致していた。
「真樹さんって美味しそうに食べるね。」
「本当に美味しいです。」
「よかった。真樹さんを連れて行ってみたい店がたくさんあるなあ。」
楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまい、帰る時間になってしまった。
帰り道もさりげなく荷持を持ってくれたり、私の歩幅に合わせて歩いてくれているのが分かって、キュンとしてしまった。
まだ一緒にいたいな。
そう思って彼の顔を見ると、彼は私の顔を見つめて言った。
「良かったら、俺と付き合ってくれませんか。」
あれから…
結局、私は、佑樹と別れて裕二さんと付き合うことにした。
正直に言うと、付き合い始めたばかりの時は、「やっぱりだめだったらどうしよう」という不安があった。
でも、そんな私達はもうすぐ付き合って1年が経つ。
1年経っても彼のことが大好きだし、これからも好きで居続けるんだと思う。
先月の記念日には、プロポーズもされて、今は幸せの絶頂だ。
あの時、あの占いをしていなければ、今の幸せは手に入らなかったかもしれない。
あなたも運命の人を間違えないで。
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