都合のいい女⇒まさかのプロポーズ!有名なセオリーを破った彼女が結婚できた理由とは?

私はどこで何をしていても、スマホを手から離すことができない。

そのせいで旅行にも行かなくなったし、できれば映画館にも行きたくない。

理由は簡単、私はいつどこに居ても、正志が私に会いたくなったらすべての予定をキャンセルして彼の元に駆けつけたい。最近は正志のことしか頭にないのだ。


“3度目のデートまで体を許してはいけない”の無理

出会ったのは三年前の冬。女友達と居酒屋へ行った時にたまたま声をかけてきたのが正志だった。

正志も友達を連れてきていて、その日は4人でわいわい飲んだだけ。ただ、帰り道であとの2人に聞こえないように「今度は2人で飲みに行こうね」と言われたのはすごくときめいた。

『3回目のデートまでは体を許してはいけない』ってよく言うけれど、本当に相手のことが好きなら守れないと思う。

1回目のデートで家に誘われたとき、このまま帰ったらもう二度と正志に会えない気がして、考えた挙句OKしてしまった。


会いたい 会いたい 会いたい

その後は典型的ないわゆる都合のいい女になってしまった。

私は用事がなくても好きな人によくLINEを送ってしまうタイプなんだけど、正志からの返信は3回に1回くらいしかない。

だいたい金曜日の深夜か日曜日の夕方、たまに平日の夜に正志から『今会える?』と連絡が来る。

その時は友達と会っていても、仕事がたくさんあっても、正志に会いに行くことにしている。

もちろんこれでいいなんて思ってない。


友達の結婚

そんなある日、友達の結婚報告LINEが来た。結婚式は…なんと、私の誕生日。

多分正志は知りもしないと思うし、祝ってもくれないんだろうけど…


『ごめんね、誕生日だしなんか予定あったよね?お式と披露宴だけとか、二次会途中までとかでいいよ?』

『うーん、大丈夫なんだけど…』


煮え切らない私を不審に思った友達が、根掘り葉掘り最近の恋愛事情を聞いてきて、洗いざらい全部話してしまった。


『そうなんだ…でも、半年前くらいは私も旦那のセカンドだったよ』

『うそ!なんで結婚することになったの?』

『うーん、友達に教えるの初めてなんだけど…この占いやってうまく行ったんだ』


送られてきたURLを押すとなんだか少し怪しげなサイト。

でも、興味本位で占ってみることにした。


私は、私より正志を優先したい

あの人の見えない本心……本当はどんな思いを抱いている?
彼はあなたの事を大切に思っている事は間違いありません。あなたの気遣いや、尽くしてくれる点に大きな魅力を感じでおります。ただ、あの方は好きになった人のことを試さずにはいられない性分なのです。

まるで、正志を見ていたような返答に少しぞっとしてしまった。

正志は無茶な時間に呼び出すくせに、いざ私が行くと本当に来た!と驚いたりすることがあった。

あの人との関係を進展させるには
今の状態を解決するには、あの人から一歩動き出すのを待つしかありません。難しいとは思いますが、1週間でいいので連絡を絶ってみてください。


その瞬間、正志からまたLINEが来た。私は……いつもどおり正志の家へ向かった。


その日は私の誕生日

それから、ずっと今までどおり正志の呼び出しに応じていたものの、心のどこかであの占いが引っかかっていた。せっかく友達が教えてくれたけど…私には守れそうにない約束だった。

ある日、いつもどおり正志の家にいたときのこと。正志の友達らしき人から電話がかかってきた。


『おう、どうした?うんうん…え、来週の28日?』


思わず正志の方を見てしまう。28日は1週間後に迫った私の誕生日。

正志も少し私の方を見たような気がしたけど、気のせいだったかもしれない。


『暇!行こうぜ!何時にする?』


心臓を誰かが掴んだように痛かった。私は何も聞かなかったことにしよう、と携帯をいじってるふりをし始めたけれど…ふとあの占いを思い出した。

――1週間でいいので連絡を絶ってみてください。

電話に気を取られている正志に見つからないように、荷物を取って逃げるように正志の家を出た。

それから、正志とはちょうど1週間連絡をとっていない。


突然のサプライズ

そして今日は式当日。私の34歳の誕生日だ。

正志は家を出た日に一度だけ『どうした?』というLINEが来ただけで、もう1週間連絡をとってない。私と正志は…認めたくないけど終わったんだと思う。

でも、誕生日に一人きりよりは全然マシだ。二次会には新郎の友達がたくさんいるし、私も新しい彼氏を見つけてやると気合を入れて臨むことにした。

私たちが簡単なダンスの出し物をした後、新郎の友達たちが、演劇みたいなものを始めると、なんと私にスポットライトが当たった。


『え、ちょっと何かの間違いなんじゃ…』


魔法使いの格好をした男に無理やり引っ張り出されて中央に立たされると、向こうからスーツを着て現れたのは正志だった。


『待たせてごめんね』

『正志くん!こんなところで何やってるの!?』

『お姫様、突然だけど俺と結婚してください』


正志がひざまずいて小さな箱を開けると、中は本当にダイアモンドの指輪が入っていた。


音信不通の理由

そのサプライズは、連絡がとれなくなったことを心配した正志が私の友達に連絡を取ったのが始まりで実現したらしい。

最初はただびっくりしただけだったし、本気なのか疑わしかったけれど…


『その約束は後で断って、誕生日をいつもどおり一緒に過ごす予定だったけど君を試してしまった。家を出て行かれたとき頭が真っ白になって、俺には君が必要だったんだって思った』


と言われてなんだか押し切られてしまった。

でも、その後私の妊娠がわかったので親への挨拶や結婚式を急いで済ませて、あとは子どもの誕生を待つばかり。

最初は一気にあれこれ決まって戸惑っていた彼だったけど、会社帰りにベビー用品を買ってきたり、私の体を気遣って料理をしてくれたり、今では私より子どもを楽しみにしている。

あの占いを信じていなかったら、私は未だに急に呼び出されて夜会うだけの関係だったかもしれない。