「結婚結婚うるさいな!…ごめん、俺ユキのこと好きだけど、重すぎるから別れたい。」
3年前、29歳の私は彼氏にフラれた。
結婚できる気がしない
友達に紹介された彼とは4年間付き合っていて、同い年だった。彼はなんでも人任せにする癖があって、デートの行き先から同棲する部屋まで全部私に決めさせた。
ただ、結婚だけは彼から言い出して欲しくて待っていたけど、30目前でも何も言ってくれない彼に我慢できなくなって、私から切り出したらいきなりフラれた。
最初は信じられなくて、彼が家を出て行った後も連絡を取ろうとしていた。
別れて1ヶ月で彼に新しい彼女ができた事を知った時は諦めたけど、私のメンタルはズタボロ。
それから彼氏はずっといない。
良さそうな人はいたけれど、絶対に結婚してくれるって確信持てなくて、フェードアウトする事が多かった。
そんな私の今の楽しみは、別部署の前田さんを遠くから眺めることくらい。26歳にして部署で最も成果を出している若手のエース。陽気な性格、筋肉質、カッコいいと全て揃っているので、社内ではいつも注目の的。
でも私は彼と接点がほとんどない。仕事のやり取りで2~3回程度話した事がある程度。多分私の思い込みなんだけど、時々目が会った気がして毎回ドキドキする。
自分が後5歳若かったらな、とその度に悲しくなるけど…
きっかけ
12月末、憂鬱な会社の忘年会に参加していた。
「ユキさん、お疲れ様です!」
2年目女子の話を聞くふりしていたら、アルコールが少し回っているのか顔が赤い前田くんに突然話かけられる。
動揺して、モゴモゴと返事をしてしまった私に彼は話しかけてくれた。彼は意外にも私が最近残業続きだったのを知っていて、心配してくれた時は嬉しすぎてニヤニヤしていた気がする。
「え、ベストショーマン見ていないんですか!?」
「すごい気になってるんだけど、忙しくて…」
2人とも大の映画好きだと分かって盛り上がっている中、彼は今話題の映画を見ていない事に驚いていた。
「来週空いていたら観に行きません?また見に行く予定だったんですよ!」
いきなり2人で映画!?と思いつつも、前田くんの誘いに私は思わず飛びついた。
後から彼の同期が他にも来る事分かり、さすがに2人はないよね…と少し冷静になった。
友達の関係?
映画館に着いたら彼と下山くんがチケット買って待っていた。
ほとんど面識がない下山くんと打ち解けるか心配だったけど、前田君がフォローしてくれたおかげで映画が始める頃には完全に打ち解けていた。
映画が始まってすぐはドキドキしていたけど、前田くんから何もなかったし、私も途中から映画に夢中で彼が隣に座っていた事も忘れていた。
「あのシーンで主人公が言っていた友達って、絶対“ラランド”のボブですよねユキさん!?」
「絶対そうだと思う!セリフ聞いた瞬間鳥肌立っちゃった!」
映画を見終わって始発を待つために入った居酒屋で私と前田君は騒いでた。
その日観た映画は偶然私と前田君が好きな映画監督の最新作で、過去作とのつながりで大盛り上がり。マニアックすぎて付いてこれなくなった下山君は早々に寝た。
「ユキさんこんなに詳しいと思わなかったです!映画仲間が増えて嬉しいです!」
始発まで前田君と話し込んだ後に帰った私は疲れ果てていたけど、「映画仲間」と言う他の人とは違う関係になれただけでも私は満足だった。
これって…どういうこと?
その後、私と前田君は月に2,3回映画を見に行く関係に。話題作には下山君もきたけど、それ以外は2人になる事が多かった。別にカップルっぽいことは一切なかったけど。
3ヶ月くらい経った頃に、彼から恋愛映画を見ようと誘われた。彼と恋愛映画を見るのは初めてだったけど、話題の映画だったし特に深く考えなかった。
映画は噂通り面白くて見入っていたら、肘掛に乗せていた左手に何かが乗ってきた。パッと左手を見たら前田君の手が私の手の上に重なっていた。
気づかないふりしながら、どうしよう、これは私が握り返すべきなの!?と焦ってたら、彼はさっと手を離し、映画が終わるまで何もなかった。
映画館を出た後、沈黙が続いた。
いつもと様子が違うから私はいつもの居酒屋ではなく駅に向かった。
彼が何を悩んでいるのかはなんとなくわかる。
そして私がそれを言いづらい雰囲気を作っている事も自覚していた。
でも、もしここで彼に告白されたら、自分が流されてしまう気がする。
次付き合う人は結婚してくれる人って決めたでしょ。
前田君は何か言いたそうだったけど、私は「じゃあ、またね!」と言って急いで駅の改札を通った。
「先輩待ってください!俺、先輩の事好きです!」
心臓が跳ね上がる。
「やだな〜もう、酔ってる?先輩をからかっちゃダメよ!」
「いや、俺本気です。今度一緒にデートしてくれませんか?」
「…少し考える時間もらっていい?」
みんなの意見
「ユキ今彼氏いないんでしょ?とりあえず付き合えば良いじゃん」
「ハルはもう結婚してるから良いけど、また結婚できない人と2,3年も付き合っていたら私とユキはもうアラフォーよ!アラフォー!しかも彼まだ26でしょ!?」
「うん…やっぱり年下すぎるよね…」
「26歳の男子なんて遊びたい盛りだし、結婚なんて絶対考えてないからやめな!」
この二人に相談するといつもそうなんだけど、慎重なサチと積極的なハルで意見が真っ二つになる。
「うう…結婚できないのは…」
「サチは男を選ぶ目がないだけで、私は前田君結婚も視野に入れてくれそうだと思うけどね」
ハルは大学時代の彼とさくっと結婚しただけあって、いつもレベルが高いアドバイスをくれる。思わずサチと二人でハルを見つめてしまった。
「え、なんでそう思うの?」
「だって、遊びたいだけなら、デートに誘い直さずにそのまま居酒屋行ってお持ち帰りしない?かなりユキを尊重してるじゃん」
「「そうかも…!」」
「まあわかんないけどね!ビールください!」
とはいえ、どこまでもマイペースなハルなので、結局「前田に聞いてみろ」という結論になってしまった。
私の決意
帰ってからまた一人で迷っていたら、グループにハルからのLINEが。
私は前田君を信じてみても良いと思う!
もし、どうしても不安だったら占ってみるのもアリだと思うよ!笑
アッ君と喧嘩した時とか、仕事で悩んでた時に使ったけど、意外と当たるし騙されたと思って使ってみて!
占いって…笑
ハルの謎フォローに思わず笑ってしまったけど、少しリラックスできた。
朝のニュースの12星座ランキングとか、雑誌に乗っている占いは読むけど…
でもせっかく勧められた訳だし、試してみた。
あ、当たりまくってる。
彼の見た目も当たってるし、世界が違う感じも言い当ててる!
元から私が彼の事が気になっていたから、ちょっとこの部分は当たっているかわからないけど、映画には誘われているし、一部当たってる…
最後に結婚についても書いてあった。
…これ本当だったら良いんだけどね。
所詮は占い。流石にこれを信じ切るのは危険だって分かっている。
ただ、吹っ切れた私はLINEでデートの誘いをオッケーした。
デート
丁度満開の桜を彼と見に行くことになった。目黒川は人で一杯だったけど、話し上手な彼と一緒にいたらなんでも楽しかったし、何より今まで知らなかった別の彼を見れてよかった。 会社では堂々としている彼だけど、彼も当たり前に悩んでいて、今まで少し上の存在だった彼との距離が縮まった気がする。
夜ご飯の後、彼と近くの公園のベンチで話していたら、改めて告白された。
「ユキさん、この間も言いましたが、僕はユキさんの事が好きです。付き合ってもらえませんか?」
「…うん、こちらこそお願いします!」
突然すぎる〇〇
一人暮らし歴が長い前田君は料理も家事も抜群で、流行りのイベントやドライブに連れていってくれる、理想的な彼氏だった。
気づいたら100日記念日で彼はホテル最上階のレストランを予約してくれていた。
ディナーを食べ終わったら彼にウェイターが何かを渡した。お会計?と思っていたら、前田君は指輪を取り出した。
「ユキさん、少し早いかもしれないけど、僕はユキさんと今後一生を一緒に過ごして行きたいと思っています。結婚してくれませんか?」
突然すぎてしばらく固まっていたけど、すぐに涙が止まらなくなった。
「宜しくお願いします」
帰りの車でハルとサチに報告ラインを送っていたら、ふと、占いでは3ヶ月経ったら入籍って言ってたな、と思い出した。
占いを完全に信じるつもりはないけど、あの時ハルに勧められた占いをしてよかったな、って思った。
あの最後のひと押しがなかったら、今頃1人で家にいた気がする。
だからもし、私みたいに迷っていたり、相手の気持ちが分からなくて怖いなら、騙されたと思って試しに占ってみて。
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